「日本の夫婦は同じ苗字を名乗るもの」。これは当たり前のようで、実は法律で決まってからまだ120年余り。しかも、それ以前は「夫婦別姓」が基本だった時代もある…と言われたら、驚きませんか?
今回は、私たちの名前「苗字」に隠された、意外な歴史の旅にご案内します。
なぜ昔の庶民に苗字はなかったのか?
まず、時代劇などを見ても庶民には苗字がありませんよね。その理由は、江戸時代の「士農工商」という厳格な身分制度にありました。
全国民が苗字を持つ時代へ(明治時代)
この状況が大きく変わるのが明治維新です。
夫婦同姓はいつから?実は「夫婦別姓」が普通だった!?
そして、本題の「夫婦同姓」です。これも明治時代に定められました。
さらに深く!「氏(うじ)」と「苗字(みょうじ)」の古代史
そもそも日本の「なまえ」の歴史はさらに古く、複雑です。
江戸時代に武士の特権とされたのは、この「苗字」のこと。私たちの苗字の多くは、この流れを汲んでいるのです。以下でもうちょっと詳しく解説しますね。
士農工商の身分制度が確立する以前、特に日本の国家形成期における「氏(うじ)」の扱いは、現代の「姓(せい)」や「苗字(みょうじ)」とは大きく異なります。
紀元前後の時代から、日本の「氏」がどのように変遷していったのか、その流れを解説します。
1. 古代国家の形成期(紀元前後~古墳時代):「氏」の発生
この時代の「氏」は、血縁を中心とした豪族(ごうぞく)の集団そのものを指す言葉でした。
2. ヤマト王権と「氏姓制度(しせいせいど)」(古墳時代~飛鳥時代)
ヤマト王権が勢力を拡大すると、各地の豪族を支配下に置くための政治的な身分秩序として**「氏姓制度」**を確立しました。これが日本の氏の歴史における最初の大きな制度です。
この時代の「氏」と「姓」は、朝廷での政治的な地位を示すためのものであり、支配者層だけが持つものでした。
3. 律令国家の時代(奈良・平安時代):「氏」の形骸化と「苗字」の萌芽
7世紀後半から8世紀にかけて、中国の法律(律令)を基にした国家体制(律令国家)が作られます。戸籍制度が整備され、国民は「氏」と名前で登録されました。
しかし、時代が進むにつれて、朝廷内の役職や官位が重要視されるようになり、古くからの「姓(かばね)」の序列は意味を失っていきます。
この頃から、貴族や武士の間で新しい形の「姓」が生まれます。
まとめ:士農工商以前の「氏」の流れ
| 時代 | 主な担い手 | 名称 | 意味・役割 |
| 古墳時代以前 | 各地の豪族 | 氏(うじ) | 血縁を中心とした集団の名称。 |
| 古墳~飛鳥時代 | ヤマト王権下の豪族 | 氏(うじ)+姓(かばね) | 氏姓制度。朝廷内での政治的な地位や家柄を示す。 |
| 平安時代以降 | 貴族・武士 | 氏(うじ) 苗字(みょうじ) | 氏:血統を示す格式高い名称(例:源、平、藤原、橘)。<br>苗字:所領の地名などに基づく、家を示す実用的な名称(例:足利、徳川、織田)。 |
このように、「氏」は古代の血縁集団の名称から始まり、政治的な身分制度である「氏姓制度」を経て、平安時代以降は武士や貴族が使う「苗字」へと発展していきました。
そして、江戸時代の士農工商制度では、この「苗字」を公的に名乗ることが武士の特権とされたのです。
まとめ
いかがでしたか?私たちの「苗字」の歴史を振り返ると、
- 全国民が苗字を持ったのは、明治時代からの比較的最近のこと。
- 夫婦同姓制度も、明治時代に「家」制度と共に確立されたもの。
- そのルーツは、古代の氏姓制度や武士の台頭など、日本の社会構造の変化と深く結びついている。
ということがわかります。普段何気なく使っている自分の名前に、こんな壮大な歴史が隠されていると思うと、少し見方が変わりませんか?

夫婦別姓の導入に、ちぃと慎重な立場からのお話
夫婦別姓をどないするかっていうのは個人の生き方や不便さをなくしたい、という声から出てきた大事な社会問題ですわ。そのお気持ちはほんまよう分かりますねん。せやけど、家族とか社会のあり方がガラッと変わるかもしれん制度やからよう考えなあかんことやと思います。
1. 「家族として一つ」ちゅう気持ちのシンボルとして
結婚ていうんは、個人と個人が結びつくだけやなくて新しい「家族」という単位をこしらえることでもありますねん。
2. 世の中の仕組みやコストのこと
今の日本の社会の仕組みは、家族は同じ苗字なんを前提に作られてますねん。
※結婚の時に、あらかじめ決めておく 夫婦別姓を選ぶ場合は、婚姻届を出す時に「生まれてくる子の姓を、夫の姓にするか、妻の姓にするか」をあらかじめ決めて届け出ることになります。 実質、これが戸籍の「筆頭者」を決めるような形になりますね。
生まれてくるお子さんは、全員同じ姓になる その届け出によって、そのご夫婦から生まれるお子さんは、一人目も二人目も、全員が自動的にその決めた方の姓を名乗ることになるという案が今出ています。
3. 「通称使用の拡大」という現実的な解決策
キャリアの継続やペーパーワークの煩雑さといった、別姓を望む方々が直面している具体的な「不便」は、社会全体で解決すべき喫緊の課題です。
しかし、その解決策は必ずしも「法的な別姓制度の導入」だけではありません。
現在、多くの職場や公的な場面で「旧姓の通称使用」が認められつつあります。この通称使用を、より法的効力のある形で社会全体に拡大・定着させていくことこそ、現実的かつ効果的な解決策ではないでしょうか。
この方法であれば、個人のアイデンティティや社会生活上の利便性を確保しつつ、戸籍制度という社会の根幹を大きく揺るがすことなく、課題を解決できます。肯定派が抱える問題意識を尊重し、その「不便」を解消するための代替案を社会全体で整備していくことが、最も建設的な道だと考えます。


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