なぜ消費税は社会保障に使われない?高市氏の食品0%案や法人税との関係を分析

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音声解説も始めてみました。

徹底図解:日本の消費税の正体と経済への影響

消費税
「不都合な真実」

なぜ「預り金」ではないのか? 社会保障に使われていない説は本当か?
データを可視化して読み解く日本の税制構造

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  1. ①② なぜ「売上妨害税」と呼ばれるのか?
    1. 消費税=第二法人税
      1. 消費税の流れ(実態)
  2. ③④ 消えた法人税と社会保障の嘘
    1. 一般会計税収の推移(1989年〜現在)
    2. 税収の入れ替わり構造(1990年比)
    3. もし1980年代の税率に戻したら?
  3. ⑤ なぜ「食品だけ」「2年間」なのか?
      1. 即効性の高い景気対策
      2. 「2年」という期限の理由
      3. インフレ対策
      4. 家計負担軽減シミュレーション(年間)
  4. ⑥ その他の重要トピック:インボイス制度
    1. 事実上の増税システム
  5. 消費税の法的本質と「預かり金」概念の虚構:レシート表示を巡る疑義
    1. 1990年東京地裁判決と財務省の主張
    2. 「預かり金的性格」というレトリックの変遷
    3. 会計処理と実務が生む誤解
  6. 「売上妨害税」としての消費税:中小・小規模事業者が直面する構造的障壁
    1. 1,000万円の壁と成長の抑制
    2. 赤字でも課税される過酷な構造
    3. 消費税の滞納とキャッシュフローへの影響
  7. 社会保障財源という名目と法人税減税の相関:税収流用の疑念
    1. 消費税収と法人税・所得税減収のパラドックス
    2. 「社会保障のため」というレトリックの崩壊
    3. 安定財源としてのメリットとその代償
  8. 法人税率の1980年代水準への回帰:経済的シミュレーションと国民生活への影響
    1. 税収増の試算と財源の多様化
    2. 1980年代回帰が国民生活に与える影響
    3. 豊かさの定義の再考
  9. 高市早苗氏の「食品消費税2年間0%」政策の深層:戦略的意図と実行可能性
    1. なぜ「2年間」なのか:財政的・制度的出口戦略
    2. なぜ「食品」だけなのか:逆進性への直接的アプローチ
    3. 経済効果のシミュレーションと批判的見地
  10. 現代の焦点:インボイス制度が変える消費税の風景
    1. インボイス制度が抱える「7つの問題点」
    2. インボイス制度の光と影
  11. 総括的展望:日本における税制の再定義と公平性の構築

①② なぜ「売上妨害税」と呼ばれるのか?

多くの人が「消費税は消費者が払った税金を店が預かり、後で納めている(預り金)」と考えていますが、法律的・実務的にはこれは誤りです。

消費税=第二法人税

消費税法において、納税義務者は「事業者」です。消費者は納税義務者ではありません。 実態は、企業の「付加価値(粗利)」に対して課税される税金です。 赤字であっても、人件費と利益の合計(付加価値)に対して課税されるため、経営を直接圧迫します。これが「売上妨害税」や「残酷な税」と呼ばれる理由です。

レシートに「消費税」の項目があるのは、消費者に「自分が税金を負担している」と納得させるための演出(転嫁)であり、法的には商品の価格の一部(対価)に過ぎません。これを「対価性」と言います。

消費税の流れ(実態)

事業者(お店)
売上 – 仕入 = 粗利
ここ(付加価値)に課税される!
納税の計算
売上の10% – 仕入の10%
※消費者の預り金ではない
赤字でも納税義務あり
人件費には課税控除がないため
雇用を守るほど税負担が増える

③④ 消えた法人税と社会保障の嘘

「消費税は全額社会保障に使われます」という政府の説明。しかし、税収の全体像を見ると、別の真実が浮かび上がります。

一般会計税収の推移(1989年〜現在)

データ出典:財務省 税収に関する資料より推計
消費税導入以降、法人税収(青)が減り、消費税収(黄)がその穴埋めをしていることが分かります。

税収の入れ替わり構造(1990年比)

消費税が増えた分、ほぼ同額の法人税が減税されています。
「社会保障のため」と言いながら、実質は「法人税減税の穴埋め」に使われたとの指摘はこのデータに基づきます。

もし1980年代の税率に戻したら?

1980年代、消費税は存在せず、法人税基本税率は43.3%でした(現在は23.2%)。所得税の最高税率も現在より高く、富の再分配機能が強力でした。

  • 法人税率を戻せば、消費税を廃止または5%以下にしても税収は維持可能との試算もあります。
  • 国民生活への影響:消費税廃止により物価が10%下落し、実質賃金が急上昇します。中間層・低所得層の可処分所得が増え、内需(GDPの6割)が拡大し、景気が回復する可能性が高いです。

⑤ なぜ「食品だけ」「2年間」なのか?

即効性の高い景気対策

食品は誰もが毎日購入するため、減税の恩恵が国民全員に即座に行き渡ります。給付金よりも事務コストが低く、スピード感のある経済対策となります。

「2年」という期限の理由

恒久的な減税は財務省の抵抗が強く、法改正のハードルが高いですが、「緊急避難的な時限措置」であれば政治的に実現しやすいという狙いがあります。また、期限があることで「今のうちに買おう」という消費喚起効果も狙えます。

インフレ対策

食料品価格の高騰(コストプッシュインフレ)に対し、税率を0%にすることで強制的に価格を下げ、家計の負担を直接軽減する狙いです。

家計負担軽減シミュレーション(年間)

※月間食費8万円の世帯を想定した場合の年間節約額試算

⑥ その他の重要トピック:インボイス制度

事実上の増税システム

インボイス制度は、これまで消費税の納税を免除されていた小規模事業者(売上1000万円以下)に対し、実質的に課税を強いる仕組みです。

  • フリーランス・声優・建設一人親方への直撃
  • 免税事業者のままだと取引から排除されるリスク
  • 事務負担の激増による生産性低下

「益税」をなくすという名目ですが、そもそも消費税は預り金ではないため、益税議論そのものが前提を誤っているという指摘があります。

本インフォグラフィックは、公開されている財務省統計および経済理論に基づき作成されたシミュレーションです。
政策判断や個別の税務については専門家にご相談ください。

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日本における消費税制度の構造的矛盾と経済動態に関する学術的考察:税体系の変遷、法的解釈、および将来の政策提言に向けた分析

日本の税制において、消費税は1989年の導入以来、一貫して国民的議論の標的となってきた。この税制は「社会保障の安定財源」として政府により正当化される一方で、現場の事業者からは「売上妨害税」と指弾され、法学界ではその「預かり金」的性格を巡る疑義が呈されている。本報告書では、消費税の法的・経済的本質を解剖し、レシート表示における矛盾、社会保障財源としての実態、法人税との相関関係、そして現代の政治的提案である食品非課税化の妥当性について、多角的な視点から詳細な分析を行う。

消費税の法的本質と「預かり金」概念の虚構:レシート表示を巡る疑義

日本の消費生活において、レシートに「消費税」という項目が独立して記載されることは、もはや日常的な光景である。しかし、この表示形式こそが、国民の消費税に対する理解を根本から歪めているという指摘がある。この問題の核心は、消費税が「直接税」なのか「間接税」なのか、そして誰が「納税義務者」なのかという法的定義に帰結する。

1990年東京地裁判決と財務省の主張

消費税が導入された直後の1989年、当時のサラリーマン新党代表らによる原告団は、消費税法が「消費者が納税義務者である」という誤解を国民に与えており、憲法に違反するとして国を提訴した 。この「平成元年(ワ)第5194号」訴訟において、東京地方裁判所が1990年3月26日に下した判決は、消費税の法的性質を定義する上で極めて重要な意味を持つ。   

この裁判において、財務省(当時の大蔵省)は驚くべき主張を展開した。それは、「消費者が納税義務者であると規定したものではないことは明らかである」というものである 。裁判所はこの主張を認め、以下の判断を下した。   

  • 消費税の納税義務者は事業者であり、消費者ではない 。   
  • 消費者は、事業者に対して消費税を支払う義務を負っているわけではなく、あくまで「商品の対価の一部」を支払っているに過ぎない 。   
  • 事業者が消費者から「預かった」とされる消費税相当額は、法的な意味での「預かり金」ではない 。   

したがって、レシートに記載されている「消費税」という項目は、法的には単なる「価格の内訳表示」であり、消費者が税金を納めていることを証明するものではない 。しかし、この表示形式が継続されていることにより、国民は「自分たちが納税者であり、店はそれを預かって国に届けているだけだ」という錯覚を抱き続けている。   

「預かり金的性格」というレトリックの変遷

政府の広報戦略も、法的解釈の変遷とともに変化してきた。当初、国税庁のポスターなどは「消費税は消費者が負担し、事業者が納める税金です」といった、間接税としての側面を強調する断定的な表現を用いていた 。しかし、上述の地裁判決以降、その表現は慎重になり、「預かり金的性格」や「いわば預かり金」といった曖昧な用語へと後退した 。   

この用語の変化は、法的に「預かり金」ではないことを認めつつも、国民の納得感を得るために「預かり金のようなもの」として扱いたいという当局の苦肉の策と言える。一方で、真の間接税である「入湯税」などは、地方税法において「温泉の利用者が納税義務者である」と明記されており、事業者は単なる徴収義務者として定義されている 。これに対し、消費税法には消費者を納税義務者とする規定が一切存在しないことが、最大の問題である 。   

会計処理と実務が生む誤解

レシート表示のみならず、企業の会計処理手法もこの誤解を増幅させている。日本の会計基準では「税抜き経理方式」と「税込み経理方式」の選択が可能であるが、多くの課税事業者は「税抜き経理方式」を採用している 。この方式では、売上から消費税分を控除して「仮受消費税」という負債勘定で処理するため、帳簿上もあたかも「預かっている」かのように見える 。   

しかし、これはあくまで利益計算の便宜上の手法に過ぎず、納税義務の発生とは無関係である 。以下の表は、消費税の法的定義と一般的認識の乖離をまとめたものである。   

項目一般的な認識(誤解)法的実態(判決に基づく)
納税義務者消費者事業者
税の性質間接税(預かり金)直接税的(売上に対する課税)
レシート表示納税の証明単なる価格の内訳表示
会計上の仮受金預かっている現金の記録利益計算上の算出値

このように、レシートに消費税項目が存在することは、法的実態から乖離した「形式的な演出」であり、これが国民に不当な負担感と誤った制度理解を植え付けているという批判は免れない。

「売上妨害税」としての消費税:中小・小規模事業者が直面する構造的障壁

消費税が「売上妨害税」という不名誉な別称で呼ばれる理由は、この税制が事業者の成長意欲を削ぎ、経営判断を歪める負のインセンティブを内包しているからである。特に、日本の経済基盤を支える中小企業や個人事業主にとって、消費税は単なるコスト以上の「足かせ」となっている。

1,000万円の壁と成長の抑制

消費税法には、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者に対して納税義務を免除する「免税点制度」が存在する。この制度は、本来であれば零細事業者の事務負担を軽減するための慈悲的な措置であるが、現実には「1,000万円を超えると損をする」という心理的・経済的な障壁を生み出している 。   

多くの事業者が、売上高が900万円台に到達すると、意図的に仕事量をセーブしたり、受注を制限したりして、売上が1,000万円を超えないように調整する行動をとる 。これは、売上が1,000万円をわずかに超えた瞬間に、それまで免除されていた数十万円規模の納税義務が発生し、結果として「売上は増えたが、手元の現金は減る」という逆転現象が起きるためである 。このように、税制が事業の拡大を「罰する」形になっていることが、売上妨害税と呼ばれる最大の要因である。   

赤字でも課税される過酷な構造

消費税のもう一つの過酷な側面は、企業の利益(所得)ではなく、売上から仕入を差し引いた「付加価値」に対して課税される点にある。ここで特に問題となるのが、人件費が仕入税額控除の対象外であるという点である 。   

法人税が「利益」に対して課されるため、赤字の企業は納税を免れるが、消費税はそうではない。たとえ赤字経営であっても、従業員に給与を支払い、事業を継続している限り、そこには「付加価値」が発生しているとみなされ、多額の消費税が課される 。景気後退期や創業期にある事業者にとって、利益が出ていない中での納税は死活問題であり、滞納が租税全体の中で最も多い理由もここにある。   

消費税の滞納とキャッシュフローへの影響

消費税は「預かり金」であるという建前があるため、滞納に対しては他の税目よりも厳しい社会的・法的制裁が加えられる傾向にある。しかし、事業の実態としては、消費税分を運転資金として活用せざるを得ないほど資金繰りが逼迫しているケースが多い。事業者は常に「消費税を払ったら資金繰りが苦しくなる」という不安に晒されており、これが新規投資や雇用拡大をためらわせる要因となっている 。   

以下の表は、消費税が事業活動を阻害するメカニズムを整理したものである。

阻害要因メカニズム経済的帰結
免税点制度売上1,000万円直前での事業停止 企業の小規模固定化、生産性の停滞
付加価値課税赤字企業や人件費率の高い企業への重課 企業の倒産リスク増大、雇用抑制
逆進的性質低所得者の消費抑制 内需の冷え込み、景気回復の阻害
事務負担インボイス対応などの複雑な経理業務 生産活動時間の減少、コスト増

社会保障財源という名目と法人税減税の相関:税収流用の疑念

日本政府は消費税率引き上げの際、常に「社会保障の安定財源確保」を大義名分として掲げてきた。しかし、1989年の導入から30年以上の歳月を経て、その名目が果たして実態を反映しているのかについて、厳しい批判の目が向けられている。

消費税収と法人税・所得税減収のパラドックス

消費税の導入以降、消費税収は確実に増大し、現在は日本の税収の柱となっている。しかし、その裏側で法人税率の段階的な引き下げと、所得税の累進性の緩和が行われてきたという歴史的事実がある。

統計分析によれば、消費税導入から現在までに国民が納めた消費税の累計額は約224兆円に達するが、同期間における法人三税(法人税、法人事業税、法人住民税)の減収額は約208兆円に及ぶ 。この数値の近似性は、消費税が社会保障の拡充に使われたのではなく、大企業や高所得者の減税分を穴埋めするために使われてきたという「税収の付け替え」を強く示唆している 。   

「社会保障のため」というレトリックの崩壊

政府は消費税収のすべてを社会保障に充てていると主張するが、これは一般会計における「予算の紐付け」に過ぎず、実際には消費税がなければ他の税収(法人税や所得税)で賄わなければならなかった社会保障費を、消費税で代替しているに過ぎない 。   

また、消費税収の約20%は、地方自治体への「地方交付税」の財源として配分される仕組みとなっており、全額が国の社会保障予算に直接投入されるわけではない 。さらに、消費税は逆進性が強く、低所得者ほど収入に対する税負担の割合が大きくなる 。社会保障を支えるための税金が、その支援対象であるはずの低所得者の生活を圧迫し、さらなる社会保障支出を必要とさせるという皮肉な構造を生み出している 。   

安定財源としてのメリットとその代償

財務省などは、法人税や所得税は景気変動に左右されやすいが、消費税は景気が悪化しても税収が落ち込みにくいため、社会保障制度を維持するための安定財源として最適であると主張する 。   

確かに財政の安定性という観点では理にかなっているが、その「安定」は消費という生存に不可欠な行為に対して一律に課税することで得られている。不況下でも確実に税金を徴収するということは、景気の下支えをすべき局面で民間の購買力を奪い続けることを意味する。社会保障の財源を主に企業(法人税)ではなく消費者に求める現在の構造は、日本経済の内需主導型成長を根本から阻害しているという指摘がある 。   

法人税率の1980年代水準への回帰:経済的シミュレーションと国民生活への影響

もし、消費税が導入される前の1980年代の法人税率に日本が戻った場合、どのような未来が待っているのか。この思考実験は、現在の「失われた30年」からの脱却を目指す上で、極めて示唆に富むものである。

税収増の試算と財源の多様化

1980年代、日本の法人税率は実効税率で50%近くに設定されていた。現在の約30%弱という水準は、国際的な法人税引き下げ競争の結果であるが、これをかつての水準に戻し、さらに大企業に対する数々の優遇税制(租税特別措置)を廃止した場合、膨大な税収が見込まれる。

ある専門家の試算によれば、法人税の累進性導入と優遇措置の廃止を組み合わせることで、年間で約19兆円から20兆円規模の税収増が可能であるとされる 。これは現在の消費税収の大部分を代替できる額であり、理論上は消費税を廃止、あるいは大幅に減税しても、現在の社会保障予算を維持できることを意味する 。   

1980年代回帰が国民生活に与える影響

法人税率を引き上げ、消費税を撤廃した場合の国民生活への影響を予測すると、以下のようなポジティブ・ネガティブ両面の結果が想定される。

  1. 可処分所得の劇的な増加: 消費税の廃止は、全世代の購買力を即座に10%底上げする効果を持つ。特にエンゲル係数の高い低所得者層や子育て世代にとって、実質的な所得増は極めて大きく、生活の質は確実に向上する。
  2. 内需の爆発的拡大: 消費税という「消費に対する罰金」がなくなることで、停滞していた国内消費が活性化し、内需主導の経済成長サイクルが始動する可能性がある。
  3. 企業の投資行動の変化: 法人税率が高い時代、企業は税金を払うよりも、人件費として従業員に還元したり、設備投資や研究開発に資金を回したりするインセンティブが働いていた。現在の「内部留保の積み増し」から「実体経済への投資」へと資金の流れが変わる可能性がある。
  4. 懸念されるリスク: 一方で、法人税の急激な引き上げは、企業の国際競争力を低下させ、海外への拠点移転(産業の空洞化)を招くリスクがある。また、株価への下方圧力となり、年金基金などの運用に影響を与える可能性も否定できない 。   

豊かさの定義の再考

国民の生活が「豊かになるか」という問いに対しては、単なる経済指標(GDP)だけでなく、社会全体の格差是正や将来への安心感という視点が不可欠である。消費税を廃止し、応能負担原則(負担能力のある者が負担する)に基づく法人税・所得税中心の税制に戻すことは、日本社会の公平性を再構築する強力なメッセージとなり得る。

高市早苗氏の「食品消費税2年間0%」政策の深層:戦略的意図と実行可能性

現代の政治情勢において、自民党の高市早苗氏が提唱した「食品の消費税を2年間に限定して0%にする」という政策は、大きな注目を集めた 。この提案には、単なる大衆迎合ではない、精緻な政治・経済戦略が組み込まれている。   

なぜ「2年間」なのか:財政的・制度的出口戦略

高市氏が減税期間を「2年間」に限定した背景には、財政規律への配慮と、新しい支援制度への移行期間という二つの論理がある。

まず、財政面では、2年間という期間限定であれば、赤字国債を発行することなく財源を確保できるという主張である 。具体的には、予算の不用額や外為特会の剰余金、さらに補助金や租税特別措置の徹底的な見直しにより、年間約5兆円とされる食品非課税化の財源を捻出するとしている 。   

次に、制度面では、この2年間を「給付付き税額控除」という、より公平で効果的な制度を導入するための「つなぎ」と位置づけている 。消費税の軽減税率(8%)は高所得者にも恩恵が及ぶが、マイナンバーを活用した「給付付き税額控除」であれば、低所得者にピンポイントで支援を集中できる。そのシステムが稼働するまでの緊急避難措置として、即効性のある消費税0%を選択したのである。   

なぜ「食品」だけなのか:逆進性への直接的アプローチ

食品に限定した最大の理由は、家計への直接的な支援効果と、税の逆進性の緩和である。低所得者ほど収入に占める食費の割合が高いため、食品の税率をゼロにすることは、低所得者層に対する実質的な所得補填効果が最も高い 。   

また、物価高騰が国民生活を直撃する中で、生活に不可欠な食品の価格が下がることは、消費マインドの改善に劇的な心理的効果をもたらす 。これは経済全体の活性化につながる「呼び水」としての役割も期待されている。   

経済効果のシミュレーションと批判的見地

野村総合研究所の木内登英氏らによる分析では、この政策による実質GDPの押し上げ効果は初年度で+0.22%にとどまると予測されている 。恒久的な減税ではないため、その効果は限定的であり、むしろ2年後の増税時に激しい反動減(需要の落ち込み)が発生することを懸念する声も強い 。   

政策要素内容と意図懸念される課題
対象:食料品逆進性の緩和、低所得者支援 事務負担(値札貼り替え)の増大
期間:2年間特例公債に頼らない財源確保 2年後の反動減、出口戦略の難しさ
目的:つなぎ給付付き税額控除導入までの措置 システム構築の遅延リスク
財源:税外収入補助金見直しや剰余金の活用 継続的な財源確保の不確実性

高市氏の提案は、消費税という固定化された制度に柔軟性を持たせようとする試みであるが、その実現には市場の信頼確保と、煩雑な事務作業を強いられる現場(小売店など)の理解が不可欠である。

現代の焦点:インボイス制度が変える消費税の風景

消費税を巡る最新かつ最大のトピックは、2023年10月に開始された「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」である。この制度は、単なる事務手続きの変更ではなく、日本の個人事業主や小規模事業者の生存条件を根本から変えるインパクトを持っている。

インボイス制度が抱える「7つの問題点」

インボイス制度の導入により、これまで免税事業者として活動してきた小規模事業者は、極めて困難な選択を迫られている。この制度に関連する主な問題点は以下の通りである 。   

  1. 経理・事務負担の激増: インボイスの形式に合わせた請求書作成や管理により、経理担当者の業務が月に平均12時間増加しているという試算がある 。   
  2. 免税事業者の取引排除: インボイスを発行できない免税事業者は、課税事業者である取引先から敬遠され、契約を打ち切られるリスクがある 。   
  3. 実質的な減税・値下げの強要: 取引を継続する条件として、消費税相当分の値下げを要求されるケースが多発している 。   
  4. システム改修コスト: レジや会計ソフトをインボイス対応にするための多額の投資が必要となる 。   
  5. 情報流出のリスク: 適格請求書発行事業者の公表サイトにより、個人事業主の氏名や住所が公開される懸念がある 。   
  6. 物価高騰への波及: 事業者が増税分やコスト増を価格転嫁することで、最終的な消費者物価を押し上げる要因となる 。   
  7. 「益税」論争の再燃: そもそも免税事業者が消費税を保持することは法的権利であるにもかかわらず、それを「不当な利益」とみなす空気が醸成されている 。   

インボイス制度の光と影

一方で、推進派はインボイス制度によって「正確な税率の把握」が可能になり、複数税率下での公平性が向上すると主張する 。また、電子インボイスの普及により、長期的には経理業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、生産性が向上するというメリットも挙げられている 。   

しかし、その「生産性向上」の恩恵を受けるのは主に体力のある大企業であり、零細事業者にとっては、事務負担という「目に見えない増税」が重くのしかかっている。インボイス制度は、消費税を「完成された税制」に近づけるための最後のピースであったが、それは同時に、日本の多様な働き方を支えてきたフリーランスや小規模店舗を淘汰するリスクも孕んでいる。

総括的展望:日本における税制の再定義と公平性の構築

本報告書を通じて明らかなように、日本の消費税は、その導入から現在に至るまで、法的実態と国民的認識、あるいは政策目的と実態効果の間に、深い溝を抱え続けてきた。

レシートに記載される「消費税」という項目は、消費者に納税の当事者意識を持たせる一方で、法的には事業者の売上に対する直接的な負担であるという事実を覆い隠している。この構造的な欺瞞が、事業者を「預かり金を横領している滞納者」という不当なイメージに陥れ、一方で消費者を「自分たちが社会保障を支えている」という過剰な負担感の中に閉じ込めている。

「社会保障の財源」という名目の下で進められた消費税増税が、実際には法人税率の引き下げを補填する形で機能してきた歴史は、税制の公平性に対する信頼を著しく損なった。1980年代の税制への回帰というシミュレーションが示すように、消費税に過度に依存しない財政構造は、理論上は可能である。しかし、グローバル経済における資本の移動性を考慮すれば、法人税のみに頼ることもまたリスクを伴う。

今後の日本が目指すべきは、消費税という単一の税目に対する過度な依存から脱却し、所得、資産、法人、そして消費の各段階において、真の「応能負担」が実現される税体系の再構築である。高市氏が提唱した食品0%案や、現在進められているインボイス制度を巡る議論は、その再構築に向けた重要な試金石となるだろう。

税制とは、単なる財源確保の手段ではなく、社会がどのような価値を重視し、どのように富を分配するかという意思表示そのものである。消費税の「預かり金」という虚構を排し、透明性の高い、そして何よりも実体経済を妨害しない税制への転換こそが、日本経済の再生と国民生活の真の豊かさを実現するための鍵となる。

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