はじめに:分断された県政
兵庫県政が直面している危機は、単なる一知事のスキャンダルに留まらない。それは、強力な権限を持つ議会の調査機関による公式な不正認定と、その対象となった知事が選挙で再選されるという、説明のつかない政治的現実との間の深刻な乖離を浮き彫りにしている 1。この問題の中心には、斎藤元彦知事、内部告発文書を作成し故人となった元県民局長、そして調査の矢面に立ち、後に激しい個人攻撃の標的となった丸尾まき県議会議員の三者が存在する。
本報告書の目的は、利用者からの要請である「丸尾議員が斎藤知事の『スキーウェアおねだり』疑惑を捏造した」とされる件について、その背景、経緯、そして真相を徹底的に解明することにある。この特定の非難を理解するためには、問題の発端となった「文書問題」の全容、地方自治法に基づき設置された百条委員会の調査と結論、そして調査後に展開された丸尾議員に対する組織的ともいえる誹謗中傷キャンペーンを包括的に分析する必要がある。
本報告書は、相反する主張や断片的な情報を整理し、証拠に基づいた分析を通じて、兵庫県政を揺るがすこの問題の構造を明らかにする。そして、地方自治における説明責任、議会の監視機能、そしてデジタル時代における政治的言説のあり方について、より広範な問いを投げかけることを目指すものである。

この話題って本間にまだ決着がついてないのすごいよね。百条委員会もそうやけど斎藤知事が疑惑否定の立場をとり続けれるのって決定的な証拠がでないからちゃうの?

おっしゃる通り、まさにその点がこの問題の核心を突いています。
確かに、録音やメールといった、誰もが納得する単一の「決定的証拠」は表に出ていません。だからこそ知事は、「記憶にない」「一つの見解だ」と主張し続けることが可能になっています 。
しかし重要なのは、百条委員会が「一つの証拠」ではなく、多くの職員アンケートや関係者の証言といった、数々の状況証拠を積み重ねた上で、「告発文書には一定の事実が含まれる」「パワハラと言っても過言ではない」と公式に結論付けた点です 。
つまり、この問題は「決定的証拠の有無」を巡る謎解きというよりは、議会が公式に認定した「調査結果という重い事実」を、行政のトップがどう受け止めるのかという、地方自治のあり方が問われる局面にある、と捉えることができます。
表1:兵庫県政を巡る混乱の時系列
| 日付(推定) | 出来事 | 関連資料 |
| 2024年3月27日 | 斎藤知事が記者会見で、元県民局長作成の文書を「事実無根」と断定し、同局長の解任と調査を発表。これが「文書問題」の発端となる。 | 3 |
| 2024年5月7日 | 兵庫県は、文書を作成した元県民局長を停職3ヶ月の懲戒処分とする。 | 5 |
| 2024年6月 | 疑惑解明のため、強力な調査権限を持つ「文書問題調査特別委員会(百条委員会)」が県議会に設置される。 | 2 |
| 調査期間中 | 百条委員会が県職員を対象としたアンケートを実施。贈答品受領に関する多数の証言が寄せられる。 | 8 |
| 調査期間中 | MBSが「スキーウェアおねだり」疑惑を報道。神鍋高原観光協会などが報道内容に反論し、議論が表面化する。 | 10 |
| 2024年9月 | 斎藤知事に対する不信任決議案が可決され、知事は失職。知事選へ。 | 1 |
| 2024年11月 | 兵庫県知事選挙が行われ、斎藤元彦氏が再選を果たす。 | 1 |
| 2025年3月4日 | 百条委員会が最終報告書を公表。「文書には一定の事実が確認された」「パワハラと言っても過言ではない」と結論付ける。 | 2 |
| 2025年3月5日 | 百条委員会の報告書が県議会本会議で賛成多数で了承される。斎藤知事は報告書を「一つの見解」と述べる。 | 14 |
| 2025年3月31日以降 | 百条委員であった丸尾議員に対し、「自殺しろ」などを含む誹謗中傷メールが1万2400件以上殺到する。 | 16 |
| 2025年4月 | 丸尾議員が兵庫県警に被害届を提出し、受理される。 | 17 |
| 2025年7月 | 丸尾議員がSNS上の誹謗中傷投稿について申し立てた発信者情報開示請求が、東京地裁で5件認められる。 | 19 |
関連資料
- ABCテレビ出口調査 斎藤元彦氏が再選 (https://www.youtube.com/watch?v=wtzZwwDMVq0)
- 百条委「一定の事実確認」と報告書提出 知事「一つの見解」 (https://www.youtube.com/watch?v=YznDphWVjp4)
- 兵庫県議会 百条委員会 報告書 (https://www.youtube.com/watch?v=uq9gXcjLxBA&pp=0gcJCfwAo7VqN5tD)
- 兵庫県庁内部告発文書問題 – Wikipedia (https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%B5%E5%BA%AB%E7%9C%8C%E5%BA%81%E5%86%85%E9%83%A8%E5%91%8A%E7%99%BA%E6%96%87%E6%9B%B8%E5%95%8F%E9%A1%8C)
- 文書問題調査特別委員会の調査報告 (https://www.youtube.com/watch?v=sQg-XMJ1rZc)
- 元県民局長を懲戒処分に (https://www.youtube.com/watch?v=9QIyaF9Hx1U)
- 兵庫県・斎藤知事の告発文書問題 百条委員会が報告書公表へ (https://www.youtube.com/watch?v=zOKarm-6PXk)
- 斎藤知事“おねだり”アンケートで新疑惑 (https://www.youtube.com/watch?v=aqcmPgSMew8)
- 「何をもらえるかで視察先」斎藤知事の“おねだり体質”疑惑 (https://www.asahi.co.jp/webnews/pages/abc_27287.html)
- 丸尾まき兵庫県議会議員のX(旧Twitter)投稿内容及びMBS放送内容について (https://hidaka.kannabe.info/information/0822/)
- 『映像’25 歪んだ正義~止まらぬ攻撃の先に~』について (https://www.mbs.jp/eizou/doc/doc250525.pdf)
- 兵庫知事の不信任案可決 パワハラ疑惑巡り (https://video.mainichi.jp/detail/video/6362152265112)
- 兵庫県・斎藤知事の告発文書問題 百条委員会が報告書公表へ (https://www.youtube.com/watch?v=zOKarm-6PXk)
- 百条委員会の調査報告書 賛成多数で了承 (https://www.youtube.com/watch?v=9FiCkuyXP2E)
- 百条委報告書受け斎藤知事会見 (https://www.youtube.com/watch?v=DajIzkDiVHc&pp=0gcJCfwAo7VqN5tD)
- 丸尾牧・兵庫県議に“ゴミ野郎” 1万件超える誹謗中傷 (https://jocr.jp/raditopi/2025/04/16/629064/)
- 「ゴミ野郎」誹謗中傷メール約1万2400件 丸尾牧兵庫県議が被害届提出 (https://www.youtube.com/watch?v=tAo24EX8OCk)
- 「お前もとっとと自殺しろよ」丸尾牧県議が被害届提出 (https://www.sun-tv.co.jp/suntvnews/news/2025/04/15/86389/)
- Xの情報開示請求で5件の開示決定 丸尾牧兵庫県議への誹謗中傷問題 (https://www.youtube.com/watch?v=E9HvoSCwMKU)
- X上で「デマ拡散による知事失脚の主犯格は丸尾」などと投稿 (https://www.sun-tv.co.jp/suntvnews/news/2025/07/29/88487/)
- 兵庫県・斎藤知事、百条委員会で証人尋問 “パワハラ疑惑”告発文書問題 ((https://www.youtube.com/watch?v=KbXnjJ_Ijfk&pp=0gcJCfwAo7VqN5tD))
- 斎藤知事の疑惑を内部告発した文書問題について ((https://www.youtube.com/watch?v=LeBPvklRCxM))
- 斎藤知事“おねだり”アンケートで新疑惑 ((https://www.youtube.com/watch?v=aqcmPgSMew8))
- 斎藤知事「40万円革ジャンおねだり」報道も… (https://dot.asahi.com/articles/-/232105?page=1)
- 「何をもらえるかで視察先」斎藤知事の“おねだり体質”疑惑 (https://www.asahi.co.jp/webnews/pages/abc_27287.html)
- 職員アンケート調査結果報告書 (https://web.pref.hyogo.lg.jp/gikai/gaiyo/koho/documents/061011-3.pdf)
- 斎藤知事 スキーウェアについては「いいなと思った記憶」と回答 (https://www.fnn.jp/articles/-/755442?display=full)
- 斎藤知事の疑惑を内部告発した文書問題について ((https://www.youtube.com/watch?v=LeBPvklRCxM))
- 斎藤知事、初めての証人尋問でも正当性主張 兵庫県百条委員会 (https://www.youtube.com/watch?v=NmEqxIn1LQA)
- MBS×映像’25 にて「歪んだ正義~止まらぬ攻撃の先に~」について(お詫び) (https://hidaka.kannabe.info/wp-content/uploads/2024/08/f020dd2a500d6515a98376f94d33ca7c.pdf)
- 【お知らせ】兵庫県齊藤知事による養父市スキー場視察のニュース記事について ((https://www.yabu-kankou.jp/%E3%80%90%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B%E3%80%91%E5%85%B5%E5%BA%AB%E7%9C%8C%E9%BD%8A%E8%97%A4%E7%9F%A5%E4%BA%8B%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E9%A4%8A%E7%88%B6%E5%B8%82%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC.html))
- MBS『映像’25』、兵庫県知事めぐるドキュメンタリーで観光協会から抗議 (https://www.oricon.co.jp/news/2387626/full/)
- 地方議会制度の概要 (https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/singi/chihou_seido/singi/pdf/No29_senmon_16_si2.pdf)
- 斎藤知事 今後の県政運営は (https://www.ktv.jp/news/feature/241119-kensei/)
- 兵庫県・斎藤知事の告発文書問題 百条委員会が報告書公表へ (https://www.youtube.com/watch?v=zOKarm-6PXk)
- 兵庫県議会 百条委員会 報告書 ((https://www.youtube.com/watch?v=uq9gXcjLxBA&pp=0gcJCfwAo7VqN5tD))
- 斎藤・兵庫県知事「報告書は1つの見解」「これまでの対応は適切」 (https://jocr.jp/raditopi/2025/03/05/621121/)
- 百条委報告書受け斎藤知事会見 ((https://www.youtube.com/watch?v=DajIzkDiVHc&pp=0gcJCfwAo7VqN5tD))
- 百条委「一定の事実確認」と報告書提出 知事「一つの見解」 ((https://www.youtube.com/watch?v=YznDphWVjp4))
- 斎藤知事のパワハラ疑惑などを告発した文書を調査する第三者委員会 (https://www.youtube.com/watch?v=I5n-lPaI2eo)
- 議員へのデマと誹謗中傷 (https://slownews.com/n/n13c6f87ed6fe)
- 歪んだ正義~止まらぬ攻撃の先に~ (https://tver.jp/episodes/eptxrhx5ige)
- 公職選挙法違反容疑で書類送検 丸尾牧兵庫県議を不起訴処分 ((https://www.youtube.com/watch?v=JPVQ0S6dpDw))
- 「自殺しろ」1分ごとに同じアドレスから届く誹謗中傷メール (https://www.ktv.jp/news/feature/250402-saito/)
- 「お前もとっとと自殺しろよ」丸尾牧県議が被害届提出 (https://www.sun-tv.co.jp/suntvnews/news/2025/04/15/86389/)
- 斎藤知事の再選劇、SNSの論調は「世論」なのか (https://toyokeizai.net/articles/-/841351?display=b)
- 斎藤知事とメディア「対立の重い代償」 ((https://www.youtube.com/watch?v=AnhRxnsYBEY))
- 元県民局長の公用PCの中身は「非公開」 (https://www.youtube.com/watch?v=vdMKa7El0tM)
- 元県民局長の公用PC「私的情報」非開示決定 (https://www.youtube.com/watch?v=r8HamqHs8cc)
- 元県民局長の情報流出疑惑 第三者委「県職員漏えいの可能性極めて高い」 (https://www.sun-tv.co.jp/suntvnews/news/2025/05/13/86949/)
- 元県民局長の情報流出疑惑 第三者委「県職員漏えいの可能性極めて高い」 (https://www.sun-tv.co.jp/suntvnews/news/2025/05/13/86949/)
- 元県民局長の公用PCの開示を求めYouTubeチャンネル運営会社が県を提訴 (https://www.youtube.com/watch?v=uCeXn7hqcg8)
- 職場におけるパワーハラスメントとは (https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/false-saito-governor-harassment/)
- 【LIVE】百条委が調査報告書を決定・公表 ((https://www.youtube.com/watch?v=BVTxswU4UsQ))
- 「パワハラといっても過言でない」斎藤元彦兵庫県知事“7つの疑惑” (https://www.fnn.jp/articles/-/838012)
- 職員が百条委で証言する場合、事前に所属長の承認必要 (https://www.sun-tv.co.jp/suntvnews/news/2024/07/19/79872/)
- 【LIVE】百条委が調査報告書を決定・公表 ((https://www.youtube.com/watch?v=HQOQyVqw5TI))
- 百条委結論 告発文書「一定の事実」 ((https://www.youtube.com/watch?v=UuKNBFRI8qA))
- 斎藤知事“パワハラ”疑惑で会見 (https://www.youtube.com/watch?v=7wo-ggaoOVA)
- 斎藤知事「うそ800」発言を謝罪も… ((https://www.youtube.com/watch?v=CKAVD-JInok))
- 地方自治法上の位置づけ ((http://hrn.or.jp/product/%E8%B3%87%E6%96%99%EF%BC%91%EF%BC%93.pdf))
- 片山前副知事「公用PCの必要部分について開示求める」 (https://news.kobekeizai.jp/blog-entry-18998.html)
- 「コメント控える」 斎藤知事「パワハラ疑惑はおおむね事実」百条委の報告書素案の報道に ((https://www.youtube.com/watch?v=1GA04-YSufY))
- 兵庫県知事選、若者が頼った情報源は (https://synodos.jp/opinion/society/29567/)
- 「二度と後手踏まない」兵庫県知事選“暴走する妄想”に翻弄された地元紙 (https://rkb.jp/contents/202502/194162/)
第1章:スキャンダルの発端:「文書問題」と疑惑の文化
1.1. 最初の火種:「文書問題」
この一連の混乱は、当時現職の西播磨県民局長が作成した告発文書から始まった 4。知事サイドはこの文書を、不満を抱いた職員による名誉毀損行為として位置づけようとしたが 3、その内容は多岐にわたる深刻な疑惑を指摘していた。
疑惑は主に二つのカテゴリーに分類される。
- パワーハラスメント(パワハラ): 公の場での叱責、理不尽な要求、威圧的な言動によって職場環境を悪化させているという告発。具体例として、公用車を降車場所から20メートル手前で降ろされたことに激高し職員を怒鳴りつけた件 13 や、深夜や休日にチャットで業務指示を多発させていた件などが挙げられた 22。
- 不適切な贈答品の受領: 公務での視察などの際に、企業や団体からコーヒーメーカー、ロードバイク、高級食材といった多数の贈答品を要求、あるいは受領していたとされる疑惑 4。
県当局の初期対応は、疑惑そのものの調査ではなく、告発者の特定と処分に重点が置かれた。その結果、元県民局長は停職3ヶ月の懲戒処分を受け、その後、不幸にも亡くなるという悲劇的な結末を迎えた 6。

局長の公用パソコンの中身って公表されたんやったっけ?
何か色々変なものが入ってたらしいけど…。

ご質問の点についてですが、元県民局長の公用パソコンの中身は、全面的には公表されていません。
県は情報公開請求に対し、「通常他人に知られたくないと認められる非公開情報にあたる」などの理由で、非公開とする決定をしています 。
ご質問の「色々変なものが入ってたらしい」という点については、斎藤知事自身が記者会見で、懲戒処分の理由の一つとして、元局長のパソコン内にあった私的情報について「倫理上、極めて不適切な文書」があったと発言したことがあります 。この発言が、様々な憶測を呼ぶ一因になっているようです。
ただし、パソコン内にあった私的情報の一部が外部に漏えいし、SNSなどで拡散されたことは県の第三者委員会も認めています 。この県の非公開決定については、YouTubeチャンネルの運営会社が決定の取り消しを求めて提訴しており、司法の判断が待たれる状況です 。
1.2. 内部からの声:県職員アンケート
百条委員会は、告発内容の真偽を検証するため、丸尾議員を含む委員の主導で県職員を対象とした匿名アンケート調査を実施した。その結果、直接的ではないものの、告発内容を補強する広範な証言が寄せられた。
この調査によって、職員の間で知事の「おねだり体質」が広く認識されていたことが明らかになった 9。アンケートからは、新たな疑惑も次々と浮かび上がった。
これらの証言は、単一の告発者による偏った見方ではなく、県庁内部に問題意識が広がっていたことを示唆している。スキーウェア疑惑は、決して孤立した特異な告発ではなく、内部で囁かれていた一連の疑惑のパターンに合致するものであった。この文脈を理解することは、「捏造」という非難の妥当性を評価する上で極めて重要である。つまり、丸尾議員がスキーウェアの一件だけをゼロから作り出したと考えるよりも、数ある疑惑の一つとして調査の対象としたと考える方が、状況証拠と整合性がとれる。

これがほんまなら職権乱用もええとこやな。本人がその気がなくても周りがその言葉を受け取って勝手に動いてしまう恐れを考慮しないといかんよね。

おっしゃる通り、その点はまさにこの問題の核心の一つです。権力を持つ人の言葉は、本人の意図を超えて周りを動かす力を持ってしまいます。
実際に、百条委員会が問題視したのも、まさにその点でした。厚生労働省の定義にもあるように、パワーハラスメントは「優越的な関係を背景とした言動」が前提となっています 。
百条委員会の最終報告書でも、知事の言動が「パワハラ行為と言っても過言ではない」と結論付けられています 。
職員アンケートでも、視察先のレストランに貸し切りを要請した件について「知事から言われたら断りにくいのではないか。一種のパワハラである」といった声が寄せられており 、トップの発言が周囲に与える影響の大きさを物語っています。ご指摘の通り、意図の有無だけでなく、その立場が周囲に与える影響を考慮することが、リーダーには求められると言えるでしょう。
1.3. 知事の立場:一貫した全面否定
斎藤知事は当初から一貫して疑惑を否定する姿勢を崩していない。最初の告発文書を「事実無根」であり「嘘800」だと断じた 7。
スキーウェアに関しては「そういったやりとりは一切知りませんし、指示したということも記憶にない」と明確に否定 27。その他の贈答品についても、コーヒーメーカーを個人的に受け取った事実はないなど、個別に反論している 28。
また、パワハラと指摘された言動については、県政運営をより良くするための「業務上必要なものとして厳しく指導する」一環であったと説明し、その正当性を主張している 22。
知事による初期の強硬な対応、すなわち疑惑内容の本格調査に先んじて告発者を公に非難し処分を下したことは、結果的に危機を深刻化させた可能性がある。この対応は、他の職員が実名で証言することを躊躇させる「萎縮効果」を生んだ一方で、唯一の安全な告発手段として匿名アンケートへの回答を促した側面も否定できない。これにより、百条委員会は検証が困難な匿名の伝聞情報に大きく依存せざるを得なくなり、知事側がそれらを「噂話」として退ける余地を与えてしまった。

匿名アンケートって本間に必要やったんやろか?名前がないというだけでものすごく信頼度が下がると思うんやけど。委員会の証人ですりガラスの向こうで発言するとかなら意味あると思うんやけど。このアンケートに関しては情報源が担保されていないという時点で無効に近くない?

おっしゃる通り、匿名であることで個々の情報の信頼性を問う声があるのは事実です。しかし、百条委員会がこの手法を選んだ背景には、職員が実名で声を上げることが極めて難しい、深刻な事情がありました。
まず、問題の発端となった元県民局長が、告発内容の本格的な調査の前に特定され、停職3ヶ月の懲戒処分を受けたという事実があります。県のこの初期対応は、百条委員会の報告書でも「不適切な対応」と指摘されています 。
このような状況は、他の職員に「告発すれば自分も同じように処分されるかもしれない」という強い恐怖心、いわゆる「萎縮効果」を生んだと考えられます 。実際に、職員が百条委員会で証言する際には、事前に所属部署の上司の承認を得る必要があるなど、証言へのハードルは非常に高いものでした。
匿名アンケートは、こうした職員が報復を恐れずに内部情報を提供できる、いわば最後の手段でした。もちろん、アンケートの回答一つ一つが決定的な証拠になるわけではありません。しかし、多数の職員から同様の証言が寄せられたことで、委員会は疑惑の全体像や県庁内部の空気感を把握するための重要な参考情報とすることができたのです。
ですので、このアンケートは「無効に近い」というよりは、権力を持つ相手に対して実名で証言することが困難な状況で、内部の実態を知るために不可欠な調査手法だった、と位置づけることができます。
第2章:スキーウェア疑惑:言説を巡る攻防
2.1. メディアによる描写:MBSニュースと「おねだり」のフレーム
スキーウェア疑惑が公に大きく取り上げられるきっかけとなったのは、毎日放送(MBS)の報道であった。MBSはドキュメンタリー番組の中で、神鍋高原観光協会の岡藤泰明会長が、視察時に貸与したスキーウェアについて「知事側」から無償提供の打診があったことを認めたと報じた 11。この報道は、疑惑が現場の関係者によって裏付けられたかのような印象を与え、「おねだり」という言葉と共に広く拡散された 10。
2.2. 反論:決定的な相違点
この報道に対し、神鍋高原観光協会は即座に公式な反論文を発表し、MBSが会長の証言を誤って伝えたと強く抗議した 10。
反論の核心は、決定的に重要な一点にあった。岡藤会長が一貫して証言していたのは、スキーウェア提供の打診をしてきたのが知事に「帯同していた秘書課の職員」であり、「知事から直接おねだりをされたという事実はない」ということだった 10。協会側は、MBSの報道が秘書課職員の行為を知事本人の直接の要求であるかのように描いており、これは「拡大解釈」であると主張した 10。また、養父市観光協会も同様の打診があった事実はないと表明している 31。
2.3. 「知事側」という言葉の曖昧さ
この対立は、「知事側」という言葉の解釈を巡る意味論的な争いに発展した。
- MBSの主張: MBSは報道の正当性を主張した。県の規定によれば、秘書課の業務は「知事・副知事の秘書事務」であり、その秘書課からの打診は、定義上「知事側」からの打診と解釈するのが妥当であると反論した。したがって、これは拡大解釈には当たらないという立場である 11。
- 第三者委員会の見解: この論争に対し、県が設置した別の第三者委員会が重要な判断を示した。委員会は、スキーウェア提供の打診が「齋藤知事の要望を受け、複数職員の伝聞を通じ」行われたと事実認定した。最終的に贈与はされなかったものの、委員会は「外形的に見て『おねだり』したと見られる可能性がある状況であったことは事実とみてしかるべきである」と結論付けた 11。
このスキーウェアを巡る一件は、政治スキャンダルが、いかにして一つの言葉の解釈を中心に展開するかを象徴している。「秘書課職員から打診があった」という中核的な事実に争いはない。争点は、その事実をどう意味づけるか、すなわちそれを「知事側によるおねだり」と表現するか否かという、まさに言説を巡る闘争であった。
丸尾議員が疑惑を「捏造」したという非難の妥当性を考える上で、この経緯は決定的である。彼女は、全く存在しない出来事を創り出したわけではない。実際に起きた出来事があり、それをメディアが特定の解釈(「おねだり」)で報じ、関係者がその解釈に異議を唱え、そして最終的に公式な調査委員会が「そのように見られても仕方がない状況だった」と認定した。したがって、丸尾議員への非難は、出来事の捏造ではなく、後に調査委員会によって妥当性ありと判断された特定の解釈に与したことに対する政治的攻撃と見るべきである。

調査委員会の「そのようにみられても仕方がない状況だった」という認定はどれぐらいの重みがあるの?おねだりを決定づけたってこと?

その認定は、「知事がおねだりをした」と100%断定した、という意味合いとは少し異なります。しかし、非常に重い意味を持つ公式な判断です。
ポイントを解説しますと、
「外形的に見て『おねだり』したと見られる可能性がある状況であったことは事実」という表現は、知事本人の内心の意図がどうであれ、客観的な状況として、周りから「おねだり」と見なされても仕方がない状況があった、ということを公式に認めたものです。
- 行為そのものの断定ではない: これは「知事が直接『このスキーウェアをください』と言った」という行為そのものを断定したわけではありません。知事自身も「指示した記憶はない」と否定しています 。
- 状況の認定である: しかし、県の第三者委員会は、「知事の要望を受け、複数職員の伝聞を通じ」スキーウェア提供の打診が行われたと事実認定しました 。その上で、知事本人からの直接の要求ではなかったとしても、知事側の行動が結果的に「おねだり」と受け取られる状況を生み出していた、と結論付けたのです。
つまり、この認定の重みは、「おねだりを決定づけた」というよりも、**「おねだりと見なされても仕方がない不適切な状況があったことを、公式の調査委員会が事実として認定した」**という点にあります。
知事個人の意図の問題から、知事という立場にある人間の言動が周囲に与える影響と、その管理責任の問題へと、論点を引き上げる重みを持っていると言えます。
第3章:議会の評決:百条委員会の報告書
3.1. 権限と責務
百条委員会は、日本の地方自治法において地方議会に与えられた最も強力な調査権限を持つ組織である。証人の召喚、記録の提出要求、そして虚偽の証言に対する罰則を科す権限を持ち、その調査結果は極めて重い政治的・法的な意味を持つ 33。県議会がこの委員会を設置したこと自体、疑惑をいかに深刻に受け止めていたかの表れであった 34。
3.2. 最終報告書:厳格な結論
9ヶ月に及ぶ調査、計18回の委員会開催、延べ34名の証人尋問を経て 3、百条委員会は最終報告書をまとめ、本会議の賛成多数で了承された 2。その内容は、知事にとって極めて厳しいものであった。
- 告発文書の信憑性について: 報告書は、知事が当初主張した「事実無根」という見方を明確に否定。「文書には一定の事実が含まれていることが認められた」と結論付けた 7。
- パワーハラスメントについて: 直接の被害を訴える証言はなかったものの、委員会は、知事による厳しい叱責などの言動がパワハラの定義に該当する可能性を指摘し、「パワハラ行為と言っても過言ではない言動があった」と認定した 5。
- 公益通報者保護について: 告発内容の調査よりも告発者の特定を優先した県の初期対応を「不適切な対応」と断じた。元県民局長の文書は「公益通報者保護法上の外部公益通報にあたる可能性が高い」とし、県の対応は同法に違反する可能性が高いと結論付けた 3。
- 総括: 報告書は、一連の問題に対する県の対応全体が「客観性公平性を欠いており」「行政機関の行うべき対応としては大きな問題があった」と厳しく断じた 2。
3.3. 行政の拒絶:「一つの見解」
議会の最も重い調査権限に基づくこの包括的かつ厳しい報告書に対し、斎藤知事はこれを事実上拒絶する姿勢を示した。知事は報告書を繰り返し「百条委員会からのま1つの見解だ」と述べ 14、告発文書への対応は「県としては適切だった」という従来の主張を維持した 15。これは、百条委員会の結論を正面から否定するものであった。
この状況は、県政における深刻な機能不全を露呈している。立法府たる県議会が、その権能を最大限に行使して行った調査の結論を、行政府の長が受け入れを拒否するという、地方自治の根幹を揺るがす事態である。丸尾議員が百条委員として関与した調査活動の正当性は、この公式な報告書によって裏付けられている。知事が報告書そのものを軽視する態度は、ひいては丸尾議員ら委員の活動の正当性を否定するものであり、その後の個人攻撃へと繋がる政治的土壌を形成したと言える。
表2:主要な疑惑に関する主張と調査結果の比較
| 疑惑・論点 | 斎藤知事の公式見解・否定 | 百条委員会の公式見解 |
| スキーウェア要求疑惑 | 「直接要求した事実も指示した記憶もない」と否定 27。 | 「外形的に見て『おねだり』したと見られる可能性がある状況であったことは事実」と認定 11。 |
| パワハラ疑惑(公用車20m) | 車両動線の確保に関する「合理的な指摘だった」と主張 21。 | 「パワハラ行為と言っても過言ではない言動があった」と認定 7。 |
| パワハラ疑惑(チャット使用) | 業務上必要な指示・指導の一環であったと主張 22。 | パワハラと認定された行為の一つとして指摘 22。 |
| 公益通報者への対応 | 「誹謗中傷性の高い文書」であり、県の対応は「適切だった」と主張 37。 | 「公益通報者保護法に違反している可能性が高い」「不適切な対応に終始」と認定 7。 |
| 県政運営の全体評価 | 自らの対応は適切であったと一貫して主張 37。 | 「客観性公平性を欠いており、大きな問題があった」と総括 2。 |

最終報告書の『パワハラと言っても過言ではない』って表現は、法的にはどういう重みがあるの?
それに公益通報者保護法違反の可能性が高いとまで言われたのに、知事はなぜ受け入れないの?

ご質問ありがとうございます。非常に重要なポイントですね。それぞれについて解説します。
1. 「パワハラと言っても過言ではない」の法的な重み
この表現は、**直接的な法的拘束力(罰則など)を持つものではありません。**しかし、地方自治法に基づき、議会に与えられた最も強力な調査権限を持つ百条委員会が出した公式な結論であるため、極めて重い「政治的・道義的」な意味を持ちます 。
具体的には、
- 議会の公式認定: 裁判所が「有罪」と判決を下すのとは違いますが、議会という公的な機関が「知事の行為はパワハラに該当する不適切なものだった」と公式に認定したことを意味します 。
- 説明責任の根拠: この認定は、知事に対して県民への説明責任を問う、非常に重い根拠となります。法的な罰則はなくても、リーダーとしての資質に重大な疑義が呈された、という議会の厳しい評価なのです。
2. 「公益通報者保護法違反の可能性が高い」のに、なぜ知事は受け入れないのか?
これには、いくつかの理由が考えられます。
- 根本的な認識の違い: 知事側は一貫して、元県民局長の文書を保護されるべき「公益通報」ではなく、職員の名誉を毀損する「誹謗中傷性の高い文書」と捉えています 。この出発点が違うため、「告発者を探し、処分した県の対応は適切だった」という主張を崩していません 。
- 法的拘束力がないこと: 百条委員会の報告書や勧告には、知事の行動を直接強制するような法的拘束力はありません 。そのため、知事はこれを「一つの見解」として、受け入れを拒否することが可能になっています 。
- 政治的な立場: 報告書を全面的に受け入れることは、自らの過ちを認めることになり、政治的責任問題に直結します。知事は、報告書の内容を事実上否定し、自身の対応の正当性を主張し続けることで、政治的な立場を守ろうとしていると考えられます。
結論として、法的な解釈の違いと、自らの正当性を主張する政治的な判断が複雑に絡み合い、知事は報告書の受け入れを拒否している状況にあると言えます。
第4章:カウンター・ナラティブ:捏造疑惑と丸尾議員へのハラスメント
4.1. 「黒幕」という物語と捏造の非難
百条委員会の調査が進み、その厳しい結論が明らかになるにつれて、事態を全く異なる角度から描く対抗的な言説、すなわち「カウンター・ナラティブ」が形成され始めた。その物語の中心に据えられたのが、丸尾まき議員であった。
彼女は、知事を失脚させるための陰謀を企てた「主犯格」あるいは「黒幕」として名指しされ始めた 19。具体的には、彼女が「『おねだり』疑惑を捏造した」張本人であり、さらには最初の告発文書の作成そのものに関与していたという虚偽の情報が、X(旧Twitter)などのSNS上で集中的に拡散された 41。
「カウンターナラティブ(counter-narrative)」は、直訳すると「対抗的な物語」とか「反対のストーリー」です。もう少し噛み砕くと、
今回の報告書で言うと、
この「カウンターナラティブ」は、事実を検証するというより、
政治的に都合のいい別のストーリーを作って世論を誘導する役割を果たすことが多いです。
SNSや一部メディアで強く拡散されると、本来の議論がそちらに流されやすくなるのが特徴です。
要は、**「公式の説明」VS「別のストーリー(反論や置き換えられた話)」**という構図ですね。
4.2. 組織的な脅迫キャンペーン
これらの非難は、単なる言論に留まらなかった。丸尾議員個人を標的とした、常軌を逸した激しいハラスメント・キャンペーンへとエスカレートしたのである。
4.3. 議員の責務 vs. 「言論弾圧」
一連の攻撃に対し、丸尾議員は自らの行動が、選挙で選ばれた議員として行政の不正を監視し、説明責任を問うという正当な職務遂行であったと一貫して主張している 41。
彼女はこのハラスメント・キャンペーンを、自身や他の百条委員を脅迫し、議会の監視機能を麻痺させることを目的とした「言論弾圧」であると厳しく批判している 16。百条委員会の元委員長であった奥谷謙一議員のもとにも同様の誹謗中傷メールが大量に送りつけられていた事実は 16、この攻撃が丸尾議員個人だけでなく、百条委員会という組織そのものに向けられていたことを示唆している。
この一連の動きは、「捏造」という非難が、事実関係を巡る誠実な議論ではなく、調査者個人を攻撃することで調査結果そのものを無力化しようとする政治的戦術であったことを物語っている。疑惑を調査するという議会人としての責務を果たした結果、議員が生命の危険に晒されるという事態は、民主主義社会におけるチェック・アンド・バランスの機能を根底から脅かすものである。
結論:相反する真実と兵庫県における説明責任の危機
本報告書が明らかにしたのは、兵庫県政が直面する深刻な断層である。そこには二つの、全く相容れない現実が存在する。
一つは、調査によって示された現実である。地方自治法に定められた最も強力な調査権限を持つ百条委員会が、職員アンケートや第三者委員会の知見も踏まえ、斎藤知事の県政運営に深刻な問題があったと結論付けた。告発文書には「一定の事実」が含まれ、その言動は「パワハラと言っても過言ではなく」、告発者への対応は「公益通報者保護法違反の可能性が高い」と公式に認定された。
もう一つは、政治的な力学が生んだ現実である。その調査の対象となった知事は、調査結果を「一つの見解」として退け、政治的責任を明確にすることなく、その後の選挙で県民の支持を得て再選された。そして、調査の中心的な役割を担った丸尾まき議員は、「捏造者」のレッテルを貼られ、生命を脅かすほどの激しいハラスメントの標的となった。
丸尾議員が「スキーウェア疑惑を捏造した」という非難は、証拠によって裏付けられていない。本報告書が示した通り、彼女が調査した疑惑の核心となる出来事(秘書課職員による提供の打診)は実際に起きており、その状況が「おねだり」と見なされ得るとの解釈は、後に第三者委員会によっても妥当性ありと判断されている。「捏造」という言説は、事実に基づいた批判ではなく、調査の正当性を失わせるための政治的なカウンター・ナラティブとして機能したと結論付けるのが妥当である。
この兵庫県の事例は、日本の地方自治が抱える脆弱性を浮き彫りにした。SNSが形成するオルタナティブな言説空間 46、行政の長が議会の監視機能を公然と拒絶した際の実効的な対抗策の欠如、そして政治的目的のためにオンライン・ハラスメントが組織的に利用される危険性。これらは、兵庫県だけの問題ではない。
この危機から信頼を回復するためには、制度的な防衛策の強化が不可欠である。公益通報者が報復を恐れることなく不正を告発できる制度の厳格な運用と、正当な監視活動を行う議員が脅迫やハラスメントから保護されるための法的・制度的枠組みの構築が急務である。さもなければ、行政へのチェック機能は形骸化し、説明責任という民主主義の根幹が蝕まれていくことになるだろう。

たしか一連のデマや捏造やって話はNHK党の立花さんが主導していたと思うんやけど立花さんが言っていたことは全てデタラメだったという事?
それとも巧妙に嘘に真実を混ぜて信頼性を高めるような手法をとっていたんやろか?
多分立花さんに影響された人ってたくさんおると思うんやけど彼の言動の何が嘘で何が本当だったの?

ご指摘の通り、この一連の問題において、NHK党の立花孝志氏が発信する情報が大きな影響力を持ったことは間違いありません。彼の主張は、単なる「デタラメ」というよりは、ご指摘の通り**「巧妙に事実と虚偽を織り交ぜ、信頼性を高める手法」**であったと分析するのが最も実態に近いでしょう。
彼の言動の何が事実で、何がそうではなかったのかを整理すると、以下のようになります。
立花氏が根拠とした「事実」の部分
- 元県民局長のパソコン内の私的情報は実在した: 立花氏がYouTubeなどで公開した元県民局長の私的情報(「T通信」など)は、彼が捏造したものではありませんでした。県の第三者委員会も調査の結果、立花氏が公開した情報と、県が保有していた元局長のパソコン内のデータは「同一であると認められる」と認定しています。この「本物の情報」を握っていたことが、彼の主張全体の信憑性を高める最大の要因となりました。
- 元県民局長側に「知事失脚を企図した」と見られる動きがあった: 元県民局長のパソコン内には、片山元副知事らを仲違いさせ、「クーデターを起こす方法はあるのか」といった内容を記したメモが存在したとされています 。また、片山元副知事も百条委員会で「元局長のメールのやり取りでは明らかに斎藤知事等の失脚を企図していたことがうかがえます」と証言しています。立花氏は、こうした情報を基に「告発は純粋な公益通報ではなく、政治的な意図があった」という物語を構築しました。
- 斎藤知事自身が立花氏の考えに「共感」を示した: 斎藤知事は記者会見で、公益通報制度に関する立花氏の考え方について問われた際、「私が思っていたことと同じことを立花さんがおっしゃっていたのでそこはすごく共感させていただいた」と述べています 。現職知事が考えに理解を示したことで、立花氏の主張に一定の正当性を与える結果となりました。
立花氏の主張の「虚偽・ミスリード」の部分
- 丸尾議員を「黒幕」「主犯格」とした点: これが最大の虚偽と言えます。立花氏は、元県民局長の私的情報という「事実」をテコにして、「この告発全体の黒幕は丸尾議員であり、彼女が知事失脚を狙ってデマを拡散した」という全く別の物語を作り上げました 。しかし、丸尾議員が告発文書の作成に関与した、あるいは疑惑を捏造したという客観的な証拠は示されていません。彼は百条委員会の委員として疑惑を調査するという職務を遂行したのであり、その後の誹謗中傷キャンペーンの標的とされました 。
- 論点のすり替え: 立花氏の手法は、「告発者(元県民局長)の人物や行動に問題があった」という一点を突破口に、本来議論されるべき「知事のパワハラや贈答品疑惑の有無」という本質的な論点を覆い隠してしまうというものでした。百条委員会が公式に「パワハラと言っても過言ではない」「文書には一定の事実が含まれていた」と結論付けた調査結果そのものを無視し、「すべては政治的な陰謀だ」という言説で無力化しようと試みたのです 。
まとめ
立花氏の言動は、「元県民局長のPCデータ」という衝撃的な事実を核に据え、それを基に**「丸尾議員黒幕説」という虚偽の物語**を構築し、SNSなどを通じて拡散させるという非常に巧みなものでした。
多くの人が影響を受けたのは、彼の主張が「全てデタラメ」ではなく、誰もが否定できない「事実」を含んでいたためです。しかし、その事実の解釈を歪め、本来無関係であるはずの丸尾議員に責任を転嫁し、問題の本質から人々の目をそらすという点で、極めてミスリーディングな情報発信であったと言えるでしょう。

SNSが発達したことと今までの一次情報だったTVや新聞の偏向報道があるという事実がみんなを事実誤認させていったことは間違いないと思う。
俺もTVや新聞の大元となるマスコミの在り方については思うところもあるし。
本当に権力に影響されない独立した存在にならない限り国民からの信頼はもう取り戻すことはできないと思っている。

おっしゃる通り、今回の兵庫県政を巡る一連の出来事は、まさにご指摘のような現代の情報環境の複雑さを象徴するものでした。
一方で、百条委員会という議会の公式な調査結果を伝える新聞やテレビなどのマスメディアがあり、もう一方では、SNSを中心にそれに異を唱える言説が大きく拡散されました。実際に、この選挙ではネットメディアとマスメディアが綱引きをしたと分析されています 。
特にSNSの影響は大きく、知事選の結果を受けて「マスメディアの偏向報道が批判され、SNSが投票結果に大きく影響を与えた」という指摘も出ました 。YouTubeを情報源とした有権者は、斎藤氏を支持する傾向が強かったというデータもあります 。
しかし、ご指摘のように、その情報の渦の中で「何が偽情報・誤情報なのか判然としない状況」が生まれ、その曖昧さが特定の見方に有利に働いた側面があった、という分析もなされています 。
こうした状況に対し、例えば神戸新聞は、SNSが盛り上がる中で、投開票日の直前にQ&A方式で「判明済みの事実」と「調査中の疑惑」を整理して報じました 。これは、混乱の中で事実に基づいた判断を促そうとする、まさに伝統的なメディアが担おうとしてきた役割と言えます。
ご指摘のように、権力から独立し、事実を丹念に整理・提示しようとするメディアの役割が、かつてないほど重要になっているのかもしれません。そして私たち一人ひとりが、どの情報をどう読み解くのかを問われる時代になった、ということなのだと思います。


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